大学生の頃、都内の某個別指導塾でアルバイトをしていた。
一人一人のレベルに合ったキメ細かい指導がこの塾の売りで、週に1回、約90分の授業の月謝がバカ高いことでも有名だった。高い月謝に見合うように「生徒には絶対に良い点数をとってもらいたい」という一心でアルバイトをしていた。
そんな私が担当したのは、数学のテストで毎回20点を取るような生徒や、英語のテストで安定して40点しか取れない様な「クラスの平均点を壊滅的に下げている生徒達」だったが、半年後には学校のテストで安定して90点を取るようになっていった。
私の教え方が特別だったわけではないが「生徒に自信を持ってもらうための演出」には一番気を使った。
小さな成功体験が大きな成功体験に繋がる
塾長が毎日呪文のように唱えていた言葉だ。
「生徒には小さな成功を体験させてあげてください。小さな成功体験が大きな成功体験に繋がります。」
何年も前の出来事なのに今でもハッキリと思い出せるぐらい、塾長は毎回この話をしていた。もはやこの話しかしていなかった。
塾での「小さな成功体験」を演出するポイント
・授業の初めに必ず確認テストをする
・確認テストの出題範囲は前回の授業で学んだ内容のみ
・発展問題ではなくて基本問題を出すこと
・生徒が90点以上取れる確認テストを作ること
・確認テストで80点以上取れていたら絶対に誉めること
子供だましの様にみえるかもしれないが、塾長の教えを守って確認テストを実施。丸付けの後は「スッゲーーーー!!!ちょーーすげーじゃーん!」とアホみたいにアゲアゲしていたら、生徒の意識が変わっていく様子がよく分かった。
子供にもプライドあります。人間ですから
低得点を連発している生徒はそもそも「自分が数学のテストで80点をとる姿」を全く想像できていない。「自分なんかどうせだめだ」と思い込み、少しでも点数を上げるための努力を全くしない。なぜなら今までも彼らなりに十分に努力してきたのに、低い点をとり続けているので、「自分は頑張っても点が取れない。他人よりも能力が低い人間なんだ」と思い込んでしまっている。※決して能力が低いわけではなく、努力の方法を間違えているだけだったりする。
だから段々と「能力が低いので頑張っても良い点取れない」ではなく、「やってなかったから良い点取れない」という状況を作って「能力の低い自分」に気付かない様に自分のことを守っていたのだと思う。
だって「自分って頑張っても結果出せない能力の低い人間なんだ」と思わされることって、色んな経験をしてきた大人にも耐えられないことじゃないですか。
こういった「自信を喪失している生徒」に「小さな成功体験」を演出してあげることは。絶大な効果を持っていた。
本当に簡単な確認テストをつくる。本音では「これ、中2じゃなくて小2の問題だろ」と思っていた。そして、生徒が正解すると全力で誉める。「スッゲーじゃん!前の授業内容、ちゃんとできてる!!これは、半年後には80点取れる勢いだわ!間違いないわ~」と新興宗教の様に生徒の頭に「80点」という単語を刷り込んでいく。
するとどうだろうか。
最初のうちは「この調子だったら絶対に80点取れるよ!(ニッカニカ~)」と言うとナニこの人、頭イッてるの?と言わんばかりの困り顔をされる。
生徒が「いや、80点はちょっと・・・」と言うので「じゃあ何点目指す?何点目指しちゃう?50点?もう一声いってみようか。60点!?60点いいね!!!」実際に60点を取ってしまう。
「この調子だったら、次は間違いなく80点だわwwwwすっごいよね、数か月前20点だったんだよ?やればできるじゃん。先生、嬉しいな \ (^-^)」そして何度もこのやり取りを繰り返しているうちに生徒自ら言う「次は80点目指したいです」。
洗脳に成功した。
ごめん、今気づいたけど、これ完全に新興宗教だったわ。
神ではなく、自分を信じる宗教だ~。
「小さな成功体験」の演出は自分に対してもできる
ここまで読んでくれた人は何が言いたいか分かっていただいただろう。
「あえて簡単なことに取り組んで、成功して喜ぶ」そして、そこで「満足」して次の成長のための努力をしない人は紛れもない愚か者だ。
一方で「簡単なことでの成功体験」から得た自信を基に、次は「少しだけ簡単なこと」→「少し難しいこと」→「難しいこと」→「すごく難しいこと」へと取り組んでいくことって素敵。
新興宗教だったとしても良いじゃないですか。
幸せになるんだから。
私は「絶対に自分は早起きできない」という呪いを自分にかけていたので、この記事を書いているうちに改めて参考に「早起きする」を諦めずに実現するための正しい努力をしようと思いました。
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前述の数学が20点しか取れなかった生徒が大学にも進学したと聞いた時は本当に嬉しかった。大学受験で数学は全く使っていないが、中学レベルで赤点を取り続けていた彼が高校数学に取り組んで無事に卒業したかと思うと感無量だった。